生命保険に加入する前に、「遺族年金」の仕組みを理解する
人生において、いつかは生命保険の加入を考えるタイミングが来ます。その時に、あわてて保険に加入するのは良くありません。色々なことを検討し、加入する保険を慎重に選ぶべきです。
検討すべきポイントはたくさんありますが、生命保険に加入する前に、必ず知っておいたほうがよい制度があります。それは「遺族年金」です。遺族年金とは、「国がかけてくれている生命保険」のことです。
「年金」という名前が付いていますが、実際は「保険としての機能」を持っています。この点は紛らわしいので、注意してください。
今回は、「生命保険の代わりになる遺族年金」について解説していきます。
残された家族に支払われる遺族年金
私たちは、国に毎月「年金保険料」を払っています。年金保険料を払っているからこそ、老後に年金を受け取ることができるのです。年金保険料を払っていない人は、将来、年金を受け取ることができません。
ほとんどの人が「年金は老後に受け取るもの」と認識しています。しかし、これは「老齢年金」という制度で、年金の機能の一部なのです。老後でなくても、年金を受け取ることができる場合があります。
それは、「年金を払っている人が死亡してしまい、家族が残された時」です。この時に支払われるのが「遺族年金」です。その名のとおり、妻(もしくは夫)や子どもなど、遺族に支払われる年金です。
遺族年金には2種類ある
遺族年金には2種類あります。国民年金から支払われる「遺族基礎年金」と、厚生年金から支払われる「遺族厚生年金」です。
全ての国民は国民年金に加入しているので、万が一のときには遺族基礎年金が支払われます。ただ、遺族基礎年金が支払われるのは、子どもがいる妻(もしくは夫)です。子どもがいない家庭や独身には支払われません。
サラリーマンなど厚生年金に加入している人は、遺族基礎年金に加えて、遺族厚生年金も支払われます。遺族厚生年金は、子どもがいなくても支払われます。支払期間は基本的に一生涯です。
どちらの遺族年金も、年金保険料を払っていないと、万が一のときに支払われません。老後のためだけでなく、万が一のときのために、年金保険料を払うことは大切です。
一般家庭のケース
今回は、一般家庭で遺族年金が支払われるケースを紹介します。このケースを理解できれば、自分の状況にも応用して考えることができます。
例えば、夫が30歳のサラリーマンで、28歳の専業主婦の妻と4歳と2歳の子どもがいる家庭があるとします。万が一、夫が亡くなってしまった場合に、残された妻と子どもに遺族年金が支払われます。
遺族基礎年金は、子どもがいる家庭では無条件で年間約78万円が支給されます。さらに、子どもの人数に応じて、支給額が加算されます。子ども一人につき年間約23万円が加算されるので、二人で年間約46万円が支給されます。
基本的には、子どもが高校を卒業すると、その子どもの加算分は支給されなくなります。子どもが二人とも高校を卒業すると、子どもがいない家庭と同じ扱いとなり、遺族基礎年金の支給は無くなります(代わりに娼婦加算という制度が適用になり、65歳になるまで年間約58万円が支給されます。)。
さらに、この夫はサラリーマンなので、遺族厚生年金も支払われます。遺族厚生年金は遺族基礎年金と違い、子どもがいなくても支払われます。支給される金額は、夫の年収によって違いますが、この年代で普通のサラリーマンなら、年間約50万円です。
つまり、78万円+46万円+50万円で、年間約174万円が支給される計算になります。月々で計算すると、14万5千円です。子どもが高校を卒業するまで、毎月14万5千円が支給されるとなると、家庭にとっては大きな収入源になります。
今回のケースでは、子どもが二人とも高校を卒業するまでに約2600万円の遺族年金を受け取ることができます。
もし自分が死亡してしまったときに、どれくらいの遺族年金が支払われるのかを計算しておくことはとても大切です。ある程度の収入は遺族年金が保障してくれるので、足りない分を生命保険で補うようにしましょう。
不親切な保険の営業マンは、遺族年金の制度について説明しません。そうなると生命保険を不要にかけ過ぎてしまいます。無駄に高額な保険に入らないためにも、遺族年金の仕組みをしっかりと理解することが大切です。
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