海外資産を保有する方法と注意点
「国外財産調書の提出制度」の施行に伴い、5,000 万円を超える海外資産を保有する人は所轄の税務署に対して「国外財産調書」の提出が義務付けられました。預貯金や株式、債券、投資信託、不動産、配当金など、ほぼすべての海外資産が申告の対象になります。
参考:国税庁
これからの時代は国内資産だけでなく、海外資産を保有することを検討するべきです。なぜなら、将来的な日本経済の衰退を考えると、国内資産を持っているだけでは資産価値が目減りしてしまうからです。
そこで今回は「海外資産を持つべき理由」や「海外資産を保有する方法」、「海外資産を持つときの注意点」などについて解説していきます。海外資産を保有する場合はきちんとした手順を踏んでください。また、税制面の申告なども怠らないようにしてください。
※ 今回の記事では、海外の金融機関から直接購入した金融商品などを「海外資産」と位置づけています。この記事では国内金融機関の外貨預金や外貨建て保険は海外資産とみなしていません。
目次
1、海外資産を持つべき理由
2、海外資産を保有する方法
3、海外資産を持つときの注意点
4、まとめ
海外資産を持つべき理由
日本が国家破産することは考えにくいですが、「インフレ」や「円安」が進行していく可能性はかなり高いです。そして、これらの要因により私たちの国内資産は減っていきます。
インフレの影響
日本はインフレ(物価上昇)が進んでいくと予想されています。なぜなら、日本の財政問題を解決するためにはお金を大量に発行し、お金の流通量を増やす必要があるからです。
日本には1,000兆円以上の借金があります。そして、この借金は毎年数十兆円のペースで増え続けています。何の対策も講じなければこのまま国家破産してしまいますが、お金の流通量が増えれば財政破綻が遠のきます。
ただ、お金の流通量が増えるほど、インフレが進行していきます。日本にある「物の数」は変わらないのに、お金の流通量だけが増えれば物価が上がっていくのは当然の理屈といえます。
実際に政府は大量のお金を発行し続けています。政府主導でインフレを進めているのです。
そして、この煽りを受けるのが私たち国民です。なぜなら、インフレが進むほど、預貯金の「価値」が減っていくからです。仮に貯金を500万円持っていても、日本にあるすべての物の値段が倍になれば、その「価値」は250万円になってしまうのです。
円安の影響
日本の人口はこれからも減っていくため、日本経済は衰退の一途を辿ります。そして、経済力が弱くなっていく国の通貨の価値は下がっていきます。「円の価値が下がる=円安」なので、日本は長期的に見れば円安トレンドなのです。
日本はたくさんの物を輸入しているため、円安になるほど物を買うのにたくさんの円が必要になります。今までは「100g=300円」で買えていたアメリカ産の牛肉が、「100g=600円」まで値上がりするかもしれません。つまり、円安になるほど相対的に預貯金の「価値」が下がることになるのです。
このように、日本がインフレになったり円安になったりする可能性はかなり高いです。そして、この流れは個人ではどうすることもできません。
私たちができることはインフレや円安に備えた対策を講じることです。その対策はさまざまありますが、特に有効なのが「海外資産を保有する」という方法です。
海外資産であれば日本の経済情勢の影響を受けることはありません。インフレや円安になっても、海外資産の価値は変わらないのです。むしろ国内資産の価値が下がるので、相対的に海外資産の価値は上がることになります。海外資産を持つことは、これからの時代に合った資産保全法といえます。
海外資産を保有する方法
海外に資産を移す方法を知っている人は少ないです。学校で教えてもらうことはありませんし、社会に出てからもそのようなことを学ぶ機会はないからです。
日本の金融情報は閉鎖的ですし、国としては国内資産の海外流出を避けたいので、このような現状になっているのは当然のことかもしれません。ただ、上述のとおり、あなたの資産を守るためには海外資産を持つ必要があります。
その方法はさまざまありますが、銀行や保険会社などの「海外の金融機関と契約する」という方法が最も一般的で安全です。
「海外の金融機関と契約なんてできるの?」と思うかもしれませんが、日本には海外金融機関との契約を仲介している企業や代理店があります。このような仲介企業や代理店を通せば、海外金融機関と契約することができます。
※ 個人が海外で資産運用をするのは、外為法(外国為替及び外国貿易法)により認められています。ただ、海外の金融機関は日本での宣伝や営業活動を禁止されているため、これらの仲介企業や代理店の存在を知らない人は多いです
海外資産を持つときの注意点
海外資産を保有するときは「金融機関との契約」と「税務署への申告」に注意しなければなりません。それぞれを順に解説していきます。
海外金融機関との契約
上述のとおり、海外資産を保有するときは、必ず海外の金融機関と契約するようにしてください。金融機関と契約すれば、投資詐欺に遭うことはありません。これは国内外を問わず、投資において非常に重要なポイントになります。
海外の金融商品は利回りが高く魅力的なものが多いですが、投資詐欺が多いのも事実です。「フィリピンのエビの養殖事業」など、あやしい投資案件はたくさんあります。このような意味不明な案件ほど、ありえないほど高い利回りが設定されているのです。
資産運用の現実的な上限利回りは年間8〜10%です。それ以上に利回りがよい金融商品は、よほどリスクが高いか投資詐欺である可能性が高いです。
世界最高の投資家であるウォーレン・バフェットですら、過去の平均利回りは年間22%です。このことからも年利が50%も60%もあるような投資案件は真っ当ではないことが分かるはずです。
税務署への申告
冒頭に示したとおり、「国外財産調書の提出制度」の施行に伴い、5,000 万円を超える海外資産を保有する人は所轄の税務署に対して「国外財産調書」の提出が義務付けられました。預貯金や株式、債券、投資信託、不動産、配当金など、ほぼすべての海外資産が申告の対象になります。
財務省の発表によると、日本の対外資産(政府、企業、個人を含む日本人が保有する海外資産)は1,000兆円を超えています。現在でもその額は増え続けているため、海外資産の把握および課税の適正化を図るためにこのような制度が設けられました。
また、海外資産が運用により増えた場合は、きちんと税金を払うようにしてください。キャピタルゲイン税、インカムゲイン税の対象となるのは国内資産だけではありません。
以上のように、海外資産を保有することで自分の資産をインフレや円安から守ることができます。ただ、すべての資産を海外に移してはいけません。インフレや円安になる可能性は高いですが、必ずそうなるとは言い切れないからです。
実際に私も海外資産と国内資産をバランスよく保有しています。
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大切なのはさまざまな状況に対応できるように国内資産と海外資産をバランスよく保有することです。そして、状況に応じて国内資産と海外資産の比率を変えていけば、将来の安定性はさらに増していくはずです。
まとめ
・国内資産はインフレや円安により価値が減っていく。特に預貯金はインフレや円安の影響を強く受ける。
・海外資産を保有する場合は銀行や保険会社などの「海外の金融機関と契約する」ことが大切である。金融機関と契約すれば詐欺に遭うことはない。
・5,000 万円を超える海外資産を保有する人は、所轄の税務署に「国外財産調書」を提出しなければならない。また、運用によって資産が増えた場合は、税金を納めなければならない。
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