ケイマン諸島:「巨額損失隠し」に使われたオフショア
あなたは「ケイマン諸島」を知っているでしょうか?
ケイマン諸島はカリブ海にあるオフショア(税金がかからない地域)です。オフショアというとマン島や香港、ドバイなどが有名ですが、ケイマン諸島も古くから存在しているオフショアになります。
ただ、他のオフショアと違ってケイマン諸島に良い印象を持っている人は少ないかもしれません。世界的な大企業の脱税や国内大手企業の巨額な損失を隠すために、ケイマン諸島の金融機関が使われたからです。
今回は「ケイマン諸島の概要」、「ケイマン諸島の歴史」、「ケイマン諸島の金融情勢」などについて解説していきます。ケイマン諸島でどのような事件が起こり、現在ではどのようなオフショアになっているのかを把握しておきましょう。
目次
1、ケイマン諸島の概要
2、ケイマン諸島の歴史
3、ケイマン諸島の金融情勢
4、まとめ
ケイマン諸島の概要
ケイマン諸島の概要は以下のとおりです。
所在地:カリブ海にある西インド諸島を構成する3つの島(グランドケイマン島、ケイマンブラック島、リトルケイマン島)
面積:259km2(大阪市や千葉市と同じくらいの大きさ)
人口:約58,000人
首都:ジョージタウン
通貨:ケイマン諸島・ドル
ケイマン諸島は独立した国家ですが、イギリスの海外領土(イギリスの政治的権限が及ぶ領域)になります。
また、ケイマン諸島は西インド諸島の中でも生活水準が高く、観光産業が栄えています。特にスキューバダイビングの名所が多く、世界中からたくさんのダイバーが訪れています。
ケイマン諸島の歴史
ケイマン諸島の歴史は1503年に始まりました。クリストファー・コロンブスが航海中に発見した無人島であり、ウミガメがたくさんいたことから、スペイン語でウミガメを意味する「ラス・トルトゥガス」と命名されました。
ただ、ケイマン諸島の命名には諸説あります。ケイマン諸島が発見されときにアメリカワニが数多く生息していたため、カリブ・インディオの言葉でワニを意味する「ケイマナス」と呼ばれるようになったことも、語源の一つといわれています。
1655年にはオリバー・クロムウェル率いるイギリス海軍が、ケイマン諸島の近隣にあるジャマイカ(当時はスペイン領)を奪いました。そして、1670年にケイマン諸島はジャマイカと共にイギリス領になったのです。
その後も約300年間、ジャマイカとケイマン諸島はイギリスの植民地として統治されていました。しかし、1961年に西インド連邦が結成され、ついにケイマン諸島は独立することになったのです。
ケイマン諸島の金融情勢
前述のとおり、ケイマン諸島はオフショアです。税金がほとんどかからないため、世界中の金融機関や企業などから莫大な資金が集まります。
しかし、ケイマン諸島は租税回避(不当に税金の支払いを少なくしようとすること)やマネーロンダリング(犯罪などによって不当に得たお金の出どころを分からなくし、正当に得たお金と見せること)に使われることが多いオフショアとしても有名です。オフショアの中では珍しくブラックなイメージがある地域なのです。
そのような背景があるため、2005年にはOECD(経済協力開発機構)がケイマン政府に対して透明性のある情報交換を求めました。その後、不当なお金の流れは改善されていきましたが、2011年にケイマン諸島でとんでもない事件が起こったのです。
日本人なら誰もが知る大手光学機器・電気機器メーカーのオリンパスの「巨額損失隠し」がケイマン諸島で発覚しました。オリンパスはケイマン諸島の金融機関を利用し、バブル崩壊時に出した多額の損失を隠していたのです。オリンパスの歴代の経営陣はそのことを知りつつ、公表していませんでした。
ただ、その後は金融情勢が是正され、真っ当なオフショアになりつつあります。そして、私たち個人が資産運用を依頼することもできるようになりました。現在では多くの日本人がケイマン諸島の金融機関と契約し、資産運用を行っています。
私の知り合いでも数人がケイマン諸島に資産を預けています。ただ、私自身はケイマン諸島では資産運用をしていません。ケイマン諸島よりも、マン島などの信頼性の高いオフショアの金融機関と契約した方が、安心して資産運用ができると考えているからです。
以上のように、ケイマン諸島は金融の環境が大きく変化してきているオフショアです。昔からあるダーティなイメージは拭い切れませんが、金融情勢が良くなってきているのは事実です。
まとめ
・ケイマン諸島は租税回避やマネーロンダリングに使われることが多いオフショアだった。ただ、OECDの介入などにより、不当なお金の流れが改善しつつある。
・最近はケイマン諸島で資産運用をしている日本人が増えてきた。
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