預金にかかるコストと「口座維持手数料」の関係
現代において、「日本の銀行の経営はうまくっている」と思う人はほとんどいないでしょう。
大手銀行では大規模なリストラが行われ、倒産する地方銀行も増えてきています。それほど、銀行の経営は厳しい状況が続いているのです。
その要因にはさまざまなものがありますが、今回はその一つである「預金にかかるコスト」について詳しく解説していきます。あまり意識したことがないかもしれませんが、預金にはいくつかの費用がかかっているのです。
また、銀行の新たなる収入源である「口座維持手数料」についても、概要や見解を述べていきます。
これからの時代はどのように銀行と付き合っていけばよいか考えながら、今回の記事を読んでみてください。
もくじ
1、銀行は顧客の預金に対して税金を払っている
2、「口座維持手数料」とは?
3、「口座維持手数料」が導入されたらメイン銀行を決める
4、まとめ
銀行は顧客の預金に対して税金を払っている
私たちは普段、何気なく預金をしています。「引き落としの曜日や時間帯によっては手数料がかかって嫌だな」と思ったことがある人も多いことでしょう。
ただ、これは私たち顧客目線の意見になります。銀行側からすると、「預金されると費用がかかるし、税金を払わないといけないから嫌だな」という思いがあるのです。
もちろん、たくさんのお金を集めることができるので、預金は銀行にとって必要なものです。ただ、コストがかかっているのは事実です。具体的には下記の費用や税金が発生します。
【預金にかかる費用】
・通帳の発行費用
・ATMの設置費用および維持費用
・顧客対応の人件費
【預金にかかる税金】
・印紙税(通帳一冊ごとに年間200円)
これを見て、「え、印紙税なんてかかってたんだ?」と思った人もいると思います。
実は預金通帳が発行される度に印紙税が発生していたのです。預金通帳に印紙は貼られていませんが、通帳の中に「印紙税申告納付につき○○税務署承認済」と記載されています(裏面に記載されていることが多いです)。これは通帳ごとに印紙税を払っていることを意味しているのです。
大手の銀行になると、数百万〜数千万の口座を保有しているといわれています。そのため、印紙税だけで数億〜数十億もの金額になってしまうのです。
そして、日本国内の銀行や信用金庫の口座を合計すると、9億もの口座があるといわれています。つまり、年間で1,800億円もの印紙税がかかっているのです。通帳の印刷費用や顧客対応の人件費なども含めると、莫大なコストになります。
そのため、銀行としては「極端に預金額が少なく、放置されている口座」は解約してほしいと考えています。顧客がお金を預けてくれない口座は、銀行にとってお荷物なのです。
このような現状を改善するため、銀行は「口座維持手数料」の導入を検討するようになりました。
「口座維持手数料」とは?
口座維持手数料とは、その名の通り「口座を維持するための手数料」です。つまり、口座を持っているだけで手数料がかかってしまうことになります。
私たち日本人には馴染みがないかもしれませんが、アメリカやフランス、ドイツなど、世界では数多くの国が口座維持手数料を導入しています。なかには年間で2,000円を超える手数料を徴収している国もあるほどです。
口座維持手数料が世界基準というわけではありません。ただ、日本の銀行の厳しい経営状況やマイナス金利政策が導入されたことを鑑みると、口座維持手数料が徴収されるようになる可能性は十分にあります。もしかすると、あなたがこの記事を読んでいる頃にはすでに導入されているかもしれません。
「口座維持手数料」が導入されたらメイン銀行を決める
口座維持手数料が導入されるとしたら、銀行各社がほぼ同じタイミングで開始するはずです。このような制度の導入は、足並みを揃える傾向にあるのです。
ただ、一律に口座維持手数料を徴収することにはならないかもしれません。いきなりすべての口座に手数料を課してしまうと、顧客の不満が大きくなり過ぎてしまうからです。
そのため、条件を満たせば口座維持手数料を徴収しないことが考えられます。具体例としては以下のとおりです。
・預金が10万円以上あれば、口座維持手数料が無料になる
・月に2回以上の取り引きがあれば、口座維持手数料が無料になる
ただ、このような特例を除いても、手数料が徴収される口座はたくさんあります。また、この特例が撤廃される可能性もあります。
それでは、このような状況において私たちはどのような対応をすればよいのでしょうか?
私たちがすべきことはメイン銀行を絞ることです。理由はもちろん、複数の銀行口座を持っているとコストがかかってしまうからです。
ちなみに私は、用途別に7つの銀行口座を保有しています。無駄に手数料を払いたくないため、ゆくゆくは2,3口座に絞ろうと考えています。
以上のように、日本の銀行口座に口座維持手数料が課せられるようになる可能性はかなり高いです。ただ、そのようになっても銀行をまったく利用しないわけにはいきません。
私たちが取るべき行動は、使用頻度の高い銀行を絞り、その銀行と上手に付き合っていくことなのです。
まとめ
・日本の銀行は厳しい経営が続いている。その要因として、通帳の発行費用やATMの設置費用および維持費用、印紙税などが挙げられる。
・経営を改善するため、銀行は「口座維持手数料」の導入を検討している。口座維持手数料が導入されると、口座を持っているだけで手数料がかかってしまうことになる。
・口座維持手数料が導入されたら、メインとなる銀行を決めることが重要になる
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