公的介護保険の要介護認定は7段階に分けられる
介護にはたくさんのお金がかかります。介護を受ける人の食費や介護ヘルパーに支払うお金、デイサービスの費用、家をバリアフリーに改築するための費用など、数えるときりがありません。
個人差がありますが、介護には月に18万円程度のお金がかかると言われています。その金額を聞くとかなりの出費になると思われるかもしれませんが、「公的介護保険」を活用することにより、実際の負担金額を少なくすることができます。
公的介護保険とは、「国がかけてくれている介護保険」のことです。40歳以上の国民が対象となり、1割の自己負担で訪問介護やデイサービスなどの介護サービスを受けることができます。
介護にかかるお金の9割は国が支払ってくれるので、私たちにとってはとてもありがたい制度です。40歳以上の介護を受けている人で、公的介護保険を活用していない人はまずいません。
ただ、訪問介護やデイサービスなどの介護サービスを1割の自己負担で無制限に受けることができるわけではありません。介護の必要性は人によって違うので、支給限度額が設定されているのです。
今回は、「要介護認定」と「支給限度額」について解説していきます。あなたの将来にも関わってくることなので、今のうちからよく理解しておきましょう。
要介護認定は7段階に分けられる
公的介護保険のサービスを受けるには「要介護認定」を受ける必要があります。国から「あなたは介護を受ける必要がある」と認められなければならないのです。
はじめに市区町村の調査員が自宅を訪問し、介護の必要性の調査を行います。さらに主治医に意見書を書いてもらい、要介護認定を受けることになります。
要介護認定は、介護の必要性に応じて「要支援1、要支援2、要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5」の7段階に分類されます。
「要支援1」が最も健康に近い状態です。立ち上がるときに人の手を借りる程度の手助けですみます。それに対して、要介護5は最も介護が必要となる状態です。ほとんど寝たきりの人が対象になります。具体的には、下記のような状態です。
要支援1……最も健康に近い状態です。現状では介護の必要はなく、食事や排泄なども一人でできます。入浴するときなどに支援が必要になることがあります。1人暮らしも可能です。
要支援2……要支援1よりも支援を必要とする状態です。立っているときに不安定になることがあります。要支援2でも1人暮らしが可能です。
要介護1……日常生活を行う能力が低下し、部分的な介護が必要な状態です。特に入浴が困難になります。1人暮らしも可能ですが、家族と同居することが望ましいです。
要介護2……入浴だけでなく、食事や排泄にも介護が必要な状態です。車いすが必要になる場合が多いです。一人暮らしをするのはかなり難しくなります。
要介護3……入浴、食事、排泄において全面的な介護が必要な状態です。起き上がりや寝返りも自力ではできません。介護をしてくれる人に暴言を吐いたり、介護を拒否したりすることもあります。この状態になると、1人暮らしは不可能です。
要介護4……日常生活のほとんどにおいて介護が必要な状態です。家族で介護することが困難なので、ヘルパーなどに介護を依頼する場合もあります。植物状態の人も要介護4に含まれます。
要介護5……寝たきりの状態です。普通に食事をすることができない場合も多く、鼻などから管を通して栄養を摂ることになります。余命わずかの人も要介護5に当てはまります。
要介護認定によって1ヶ月あたりの支給限度額が違う
要介護認定によって介護に関するサービスの支給限度額が異なります。簡単に言うと、「毎月いくらまで1割負担で介護サービスを利用できるか」が違うということです。
例えば、「要介護2」であれば、月々の支給限度額は約20万円です。つまり、介護のサービスの全額が20万円になるまでは、1割の自己負担(この場合は2万円)ですみます。もし、支給限度額を超えてしまったら、その分のお金は自分で負担しなければなりません。
支給限度額の具体的な金額は下記の通りです。支給限度額は変更になることがあるので、正確な金額はご自身でご確認ください。
以上のように、かなりの金額まで1割の自己負担で介護サービスを受けることができます。
私の父は脳梗塞で倒れ、介護を受けなければならない状態になりました。今でこそ「要支援1」まで回復しましたが、発症直後は「要介護2」の状態で、家の中でも車いすで移動しなければなりませんでした。
介護はあなたにとっても身近な問題です。あなたの家族や身近な人が介護状態になったときのために、公的介護保険がどのような制度であるかをしっかりと理解しておきましょう。
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