「老齢年金(年金)」を受け取るための条件
あなたは「老後の生活にかかるお金」について考えたことがあるでしょうか? 安心して老後を過ごすためには、あらかじめその概要を把握しておく必要があります。
実は老後の生活では出費が少なくなります。仕事をリタイアしているので所得税を払う必要がありません。また、年金保険料も払い終えています。そして、子どもが成人になっていることが多いので、教育費もかかりません。
このように、老後の生活にはあまりお金がかからないのです。
ただ、出費が少ないから安心して生活できるかというと、そういうわけでもありません。仕事をリタイアしているので、給与がなくなってしまうのです(自営業などは収入があります)。今まであった収入がなくなると、どうしても不安になってしまいます。
それでも、「老齢年金(年金)」が老後の収入の柱となり、私たちの生活を助けてくれます。将来の年金受給額は少なくなると予測されていますが、「老後にも定期的な収入がある」というのはとても大きな安心材料になります。
ただ、老齢年金を受け取るためには、ある条件を満たさなければなりません。その条件を満たしていないと、「老後に年金が1円ももらえない」ということにもなりかねないのです。
そこで今回は「老齢年金(年金)を受け取るための条件」について解説していきます。万が一にも、「老後に年金が支給されなかった」ということのないようにしてください。
老齢年金を受け取るためには、年金保険料を「10年」以上払わなければならない
老齢年金を受け取るためには、働いているときに年金保険料を納めなければなりません。そして、年金保険料の納付が一定の期間を超えれば、老齢年金の「受給資格」を得ることができます。
その期間は、原則として「10年」です。納付期間が10年に満たなければ、老後に年金を受け取ることができません。
※ 2017年8月までは、老齢年金の受給資格期間は25年でした
また、納付期間が10年以上であれば、どの公的年金に年金保険料を納めていても問題ありません。
例えば、サラリーマンから自営業に転職して、厚生年金の保険料を払わなくなったとします。このような場合でも、国民年金の年金保険料は納め続けなければなりません。会社員として納めた期間と自営業として納めた期間の合計が10年以上であれば、老後に年金が支給されます。
まれに自営業に転職したときに、厚生年金だけでなく、国民年金の年金保険料も払わなくなる人がいます。
このときすでに、年金保険料を10年以上納付していれば問題ありません。しかし、支払期間が10年に満たない状態で自営業に転職した場合は、国民年金を払っておかねいと、老齢年金が支給されなくなってしまうのです。
どのような公的年金(国民年金、厚生年金、共済年金)でも構わないので、「年金保険料を10年以上払う」ということを覚えておいてください。
「老齢年金の受給資格」を得るための方法
それでは、年金保険料の納付期間が10年に満たない人はあきらめるしかないのでしょうか? 実際に納付期間が10年に届かないケースもあるのが現状です。それほど、年金保険料を払わない人が増えているのです。
納付期間が10年に満たない人も、以下の方法を活用すれば年金が支給されるかもしれません。まずはどのような方法があるのかを把握し、自分に適用できるか考えてみましょう。
1、滞納していた年金保険料を払う
通常であれば未払いの年金保険料は、2年前までさかのぼって納付することができます。また、「後納制度」を活用すれば、5年前までさかのぼって納付することができます。
2、国民年金の保険料免除制度を活用する
ある一定の条件が揃えば、国民年金の年金保険料の納付が免除されます。例えば、大学などに在学している場合や失業した場合です。
年金保険料の「免除」は、「未納」とは違います。年金保険料の免除期間は、納付期間と同じ扱いになります。つまり、年金の受給資格期間である10年にカウントされるということです。
保険料免除制度を活用したい場合は、あらかじめ「市区町村の国民年金担当窓口」に申請する必要があります。
3、国民年金に任意加入する
国民年金に任意で加入すれば、老齢年金の受給資格を得るまで、年金保険料を払い続けることができます。
例えば、65歳の時点で年金保険料の支払期間が5年であったとします。この状態では受給資格がないため、老齢年金を受け取ることができません。しかし、国民年金に任意加入し、あと5年間支払い続ければ受給資格が得られるのです。
まれに60歳を過ぎても年金保険料を払っている人がいるのには、このような理由があったのです。
4、会社員や公務員になり、年金保険料の納付期間を延ばす
60歳を過ぎても会社員や公務員として働けば、厚生年金や共済年金に加入し続けることができます。そして、年金保険料を払い続けるのです。年を取ってから日本に移住してきた外国人が、この方法を活用しています。
5、カラ期間をチェックする
現代では20歳以上のすべての国民は、国民年金に加入しなければなりません。しかし、昔はそうではありませんでした。国民年金の加入は「任意」だったのです。そのため、現代の制度になったときに、「10年も年金保険料を払えない」という人が出てきてしまいました。
例えば、65歳になってから国民年金に加入しても、10年間も年金保険料を払い続けることはできません。ただ、昔は国民年金に加入する義務はなかったので、加入者が悪いわけではありません。
そこで、救済措置として「任意で加入しなかった期間」を「年金保険料を納めた期間」とみなすことになったのです。
この期間のことを、「カラ期間」といいます。「カラ期間をチェックしただけで、納付期間が10年を超えた」というケースもあるので、一度確認してみることをおすすめします。
以上のように、さまざまな方法を使うことで、老齢年金の受給資格を得ることができます。これらの方法を活用したい場合は、日本年金機構の年金事務所や年金相談センターに問い合わせてみてください。
ただ、色々な手続きを行ったり、納付期間を計算したりするのはとても面倒です。また、納付期間が10年を超えるまでは、精神的に落ち着きません。このような無駄な心配をすることのないように、常日頃からきちんと年金保険料を払うようにしてください。
まとめ
・老齢年金を受け取るためには、年金保険料を10年以上払わなければならない。
・年金保険料の納付期間が10年に満たない人でも、「滞納していた年金保険料を払う」、「国民年金の保険料免除制度を活用する」、「国民年金に任意加入する」、「会社員や公務員になり、年金保険料の納付期間を延ばす」、「カラ期間をチェックする」などの方法を用いれば老齢年金の受給資格を得ることができる。ただ、このようなことをするのは手間なので、日頃からきちんと年金保険料を払うことが重要である。
『お金のガイドブック』: 無料メルマガ
『お金のガイドブック』:Twitter
Twitterでは「最新の経済、金融事情」について発信してます。 ぜひ、フォローをよろしくお願い致します!関連ページ
- 年金には「老齢年金」、「障害年金」、「遺族年金」の3種類がある
- 年金の心配をする前に「老後にかかるお金」を把握する
- 年金保険料(年金)を払わなければならない理由
- 日本の年金制度が破綻する3つの要因
- 老後に受け取れる年金は、払った金額よりも少なくなる
- 年金記録問題:年金記録が消えた理由
- 老齢年金の基礎知識:老齢基礎年金、老齢厚生年金、老齢共済年金
- 日本の老齢年金には「賦課(ふか)方式」が適用されている
- 障害年金とは「国がかけてくれている障害保険」のことである
- 「障害年金」を受け取るための条件:障害等級、納付期間
- 遺族年金とは「国がかけてくれている生命保険」のことである
- 「遺族年金」を受け取るための条件:生計維持関係、納付期間
- 初心者が知るべきiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)のメリット・デメリット