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国民は「円高」を望み、国は「円安」を望む

国民は「円高」を望み、国は「円安」を望む

 

テレビでは毎日のように、「1ドル=〇〇円」という為替レートが発表されています。為替は常に変動しているため、円高になったり円安になったりするのです。

 

それでは円高と円安ではどちらの方が望ましいのでしょうか?

 

その問いに対する明確な答えはありません。なぜなら、どちらが望ましいかは立場によって変わってくるからです。「国にとって望ましい状況」、「企業にとって望ましい状況」、そして「私たち国民にとって望ましい状況」があるのです。

 

そこで今回はそれぞれの視点から円高・円安について見ていきたいと思います。円高と円安のどちらになれば、私たちの生活が楽になるのかを把握しておきましょう。

 

為替レートは常に変動している

為替レートとは「自国の通貨と他国の通貨を交換するときの比率」のことです。他国が使用している通貨の数だけ、為替レートは存在します。具体的には「1ドル=○○円」、「1ユーロ=○○円」、「1元=○○円」のように表現されます。

 

今でこそ為替レートは変動していますが、昔は「固定相場制」になっていました。1970年までは「1ドル=360円」に固定されていたのです。その後、スミソニアン協定が締結され、変動相場制が導入されることになりました。

 

円高・円安の基礎知識

円高・円安は他国の通貨に対する「円の価値」を示しています。

 

1ドルの商品を買うときに「1ドル=120円」なら120円が必要になりますが、「1ドル=80円」なら80円で買うことができます。つまり、「1ドル=○○円」の○○円が小さくなるほど、円の価値が高くなります。反対に○○円が大きくなるほど、円の価値が低くなります。

 

このように、円高は「円の価値が高くなること」円安は「円の価値が低くなること」なのです。

 

国民は円高の方が生活しやすい

国民にとっては円高と円安でどちらがよいのでしょうか? 普段の生活のことを考えると、「円高」の方が望ましいといえます。その理由を日本と海外の関係を踏まえて説明していきます。

 

日本は世界有数の輸入大国です。原油や石油製品、衣類など、たくさんの物を輸入しています。特に食料品に関しては、そのほとんどを輸入に頼っています。国産が多いのは米と野菜くらいです。

 

そして日本の人口はこれからも減り、自国の産業が衰退していくため、今後も輸入に頼る割合は大きくなることが考えられます。

 

このような背景があるため、より少ない日本円で輸入できる「円高」の方が生活しやすいことになります。反対に円安が進めば、海外から輸入している商品の値段は上がっていくことになるのです。

 

海外旅行に関しても同じです。「海外旅行」という海外商品を買うと考えてください。2,000ドルのハワイ旅行に申し込む場合、「1ドル=80円」なら16万円で行くことができますが、「1ドル=120円」なら24万円もかかってしまいます。

 

このように私たち国民にとっては、円高になるほど出費が少なくなり、円安になるほど出費が多くなるのです。

 

円高になると輸入企業が儲かり、円安になると輸出企業が儲かる

続いては企業の立場から円高・円安を考えていきます。

 

日本にはたくさんの企業があります。そして、多くの企業が何らかの形で輸入や輸出に関わっています。

 

「製品を国内で製造し、国内で販売する企業」であれば輸出や輸入は行いませんが、そのような企業はかなり少ないです。なぜなら、国内で製造するにしても、原材料などを海外から輸入している場合が多いからです。そのため、実質的には輸入や輸出に関連していない企業はほとんどありません。

 

企業のなかでも「メインとなる収益(売り上げ)を輸入によって得ている企業」のことを輸入企業といいます。反対に「メインとなる収益(売り上げ)を輸出によって得ている企業」のことを輸出企業といいます。

 

輸入企業であれば個人と同じです。円高の方が望ましい状況になります。

 

例えば、大手衣料品メーカーのユニクロは円高になるほど海外から商品や原材料を安く仕入れることができます。そのため、多くの利益を手に入れることができるのです。

 

反対に輸出企業は円安の方が望ましい状況になります。

 

例えば、大手自動車メーカーのトヨタは円安になるほど海外に商品を売るときの売り上げが大きくなります。アメリカで2万ドルの自動車を販売する場合、「1ドル=80円」であれば160万円を手に入れることができますが、円安が進み「1ドル=120円」になれば240万円を手に入れることができます。つまり、円安になるほど高い値段で商品が売れるため、利益も大きくなるのです。

 

このように、輸入企業にとっては円高のほうが望ましく、輸出企業にとっては円安のほうが望ましいのです。

 

国は円安を望んでいる

最後に国が円高と円安のどちらを望んでいるのかを解説していきます。

 

日本には1,000兆円を超える莫大な借金があります。そして国はこの借金問題をなんとか解決しようとさまざまな策を講じています。

 

そのなかで最も簡単で効果的なのが、「お金の流通量(マネタリーベース)を増やす」という方法です。

 

具体例として、国がものすごい量のお金を発行し、お金の流通量が10倍になったと過程します。

 

このとき、重要なことは「お金の流通量が増えるとお金の価値は下がる」ということです。例えば、トレーディングカードでもなかなか手に入らないものは価値が高いですが、よく手に入るものは価値が低いです。「流通量」と「価値」は反比例するのです。そしてそれは通貨も例外ではありません。

 

国がお金の流通量を10倍にすると、1,000兆円の借金の価値は今までの1/10まで減ります。借金の「額」は変わりませんが、お金の流通量が増えた分だけ借金の「価値」が低くなるのです。

 

このような方法を用いれば、国は借金問題を解決することができます。ただ、その影響で円安が進行してしまいます。なぜならお金の流通量が増えるほど、通貨の価値が低くなるからです。

 

このように「借金問題を解決するためお金の流通量を増やす → 借金の価値は薄まるが、円安になる」という流れになるのです。

 

つまり、国は円安になることを望んでいます。円高を望む国民とは逆の狙いがあるのです。

 

今回の例のように、国と国民の利害は対立することが多いです。そして、基本的には国の思う方向に経済が動いていきます。なぜなら日本を動かしているのは政府であり、私たち国民ではないからです。

 

このような背景があるため、「国はどのような状況になることを望んでいるのか」を考えることはとても大切です。そして、その状況を踏まえた上で、自分がどのような行動を取るべきかを考えてください。ある程度将来を予測することができるなら、その対策を講じることは難しくありません。


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